歯周病治療

■歯周病(歯肉炎・歯周病)とは

歯周病は歯肉炎・歯周病の総称です。歯周病は気が付かないうちに進行し、最悪の場合、歯が抜けてしまう恐い病気です。歯周病予防の第一歩として、まず歯周病について正しく理解しましょう。

◯歯周病は歯周ポケットから進行する病気

・歯周病は「歯周ポケット」と呼ばれる、歯と歯ぐきのすき間にある溝からはじまります。歯磨きが正しくできていないと、次第に歯周ポケット内に細菌の住処となる汚れがたまっていき、歯ぐきの中で炎症を起こします。

〇歯肉炎は歯周病の初期段階であり、歯肉にのみ炎症がある状態です。

痛みはなくてもケアは必須です。症状は軽度でしっかりケアすれば症状はおさまってきます。歯肉炎にならずして歯周病はおこらずと言われております。

歯周病はある日突然起こるものではなく、徐々に進行していく病気です。 そのため症状に気が付かなかったり、「たいしたことはないだろう」と放置したりする人が多いのが現状です。放置してしまうと症状はどんどん進行してしまうので、そうなる前にしっかりケアすることが大切です

〇気がつかないうちに進行する歯周病

「歯周病なんてまだ自分には関係ない」、そう思っていませんか?実はある調査によると、30代以上の3人に2人が歯周病と言われています。しかも、多くの方は自分が歯周病であると自覚していないことが多いのです。気づかないうちに進行する、というのも歯周病の恐いところです。

〇歯を失う原因1位は歯周病

歯周病は痛みや見た目の変化がほとんどないため、ケア意識が薄くなりがちですが、実は歯を失う原因第1位のこわい病気です。大切な歯を守るためにも、しっかりと歯周病予防を行っていくことが大切です。

 

■歯周病の原因

〇歯周病の直接的な原因

歯肉炎・歯周炎を含む歯周病の直接的な原因は、歯垢(プラーク)です。歯垢(プラーク)は生きた細菌の塊で、そのほとんどが酸素の少ない場所を好むため、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)に潜んでいます。この歯垢(プラーク)中の細菌が出す毒素によって、歯ぐきに炎症がおきてしまうのです。

・歯周病の間接的原因=リスクファクター(危険因子)

歯肉炎・歯周炎を含む歯周病は、「口腔内の環境」や「生活習慣」にも間接的な原因となるリスクファクター(危険因子)が潜んでいます。歯肉炎のケアには、適切なブラッシングで歯垢(プラーク)を取り除くことと、リスクファクターを少なくしていくことが必要です。

〇お口のトラブル

・普段からお口のケアを怠っていたり、お口の健康に悪い習慣などを放置しておくと、歯周病などを引き起こすことがあります。

・歯垢

 

口の中の汚れや細菌が増殖すると歯垢(プラーク)が作られ、磨き残した歯垢(プラーク)は約2~3日で石灰化し、歯石となります。歯石が一度ついてしまうと、歯磨きでは落とすことができず、歯ぐきの炎症などを引き起こします。

  

・歯並び

 

歯並びが悪い部分は歯磨きが不十分になりやすく、磨き残しから歯垢(プラーク)がつきやすくなります。

・歯に合わない被せもの

 

むし歯治療などで詰め物や被せ物をしていると経年劣化により歯と被せ物の間に隙間ができ、そのまわりに歯垢(プラーク)がつきやすくなります。

・口呼吸や歯ぎしり

 

口で呼吸することが癖になっていると歯垢(プラーク)がたまりやすい乾燥した状態になります。また、歯ぎしりは歯や歯ぐきに強い力がかかり、炎症が起こりやすくなります。

〇生活習慣

歯周病の原因は歯周病菌だけではありません。ふだんの何気ない生活習慣が歯周病につながることもあるのです。

・喫煙

 

喫煙は、血管が収縮し、歯ぐきの血行がわるくなります。その結果、歯周病への抵抗力を弱めてしまいます。

・ストレス

 

ストレスが多い毎日で、食習慣や歯磨きの習慣が変わることがあります。さらには、ストレスが原因で体の抵抗力が弱まり、歯周病が悪化しやすくなることもあります。

・食生活

 

不規則な食生活や栄養バランスを欠いた食事をしていると、体だけでなく歯や歯ぐきにも悪影響を及ぼします。また甘いもの、やわらかいものは歯につきやすく、歯垢(プラーク)が増える原因となります。

■歯周病は国民病

〇30代以上の3人に2人が歯周病に。
知らず知らずに症状が進行

 

歯周病の有病率について年代別に見てみると、30代から60代にかけての有病率が高く、30代以上では、3人に2人の歯周組織に所見がみられます。年代が上がるに従って、症状が進行した人の割合が増加。対象となる歯を喪失していく70代ごろまで、その傾向は続きます。

しかし、歯周病は、初期の段階では自覚症状があまりなく、自分でチェックするのも難しいため、自分が歯周病であることに気づかない人が大半です。知らず知らずのうちに罹患していて、進行していくところが、歯周病のこわいところなのです。

〇歯周病は歯の喪失原因第一位

むし歯は歯がむし歯細菌によって溶かされる病気ですが、歯周病は、歯を支えている歯ぐき・歯槽骨などの歯周組織が傷害されている病気。歯と歯ぐきの境目に磨き残した歯垢(プラーク)が主な原因となり、歯周組織に炎症が起こる細菌感染症です。

進行すると、やがて歯が抜けてしまうこともあります。日本人が歯を失う原因としては、歯周病とむし歯が二大疾患となっていますが、40代後半からはむし歯よりも歯周病のほうが割合が高くなってきています。全体としては歯周病が最も割合が高く、約40パーセントを占めています。

■歯周病の進行と症状

歯周病が進行すると、歯周ポケット(歯と歯ぐきのすき間)が深くなり、歯ぐきやその周辺にさまざまな症状があらわれます。

〇歯周病の進行

 

歯周病はある日突然、重度の症状が出るわけではなく、徐々に進行する病気です。重度になってから慌てて治療しても失った歯槽骨を戻すのは難しく、早い段階から予防することが大切です。ここでは5つの段階に分けて、歯周病を説明いたします。

・歯周病の進行過程

  • 健康な状態
  • 歯と歯ぐきの間には1〜2㎜程度のすき間があります。

  • 歯肉炎
  • 歯垢(プラーク)がたまった状態を放置すると、歯ぐきに炎症が起き、2〜3mmのすき間ができます。

  • 歯周病(軽度)
  • 歯ぐきの炎症がひどくなり、歯周病菌が歯周組織に侵入。歯槽骨や歯根膜も破壊されはじめます。

  • 歯周病(中度)
  • 炎症がさらに拡大し、歯槽骨も半分近くまで破壊が進み、歯がぐらつきはじめます。

  • 歯周病(重度)
  • 歯槽骨が半分以上破壊され、歯はぐらぐらになります。

〇歯周病の症状

歯周病になると、歯ぐきの赤みや腫れ、出血、口臭といった症状が起こります。症状が重症化した場合、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまい、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。歯周病が原因で歯が抜けてしまうと、噛む力が弱くなり、食べられるものの種類が限られてしまいます。

また,歯槽骨が溶けて少なくなっている場合が多いため、その後の治療、義歯やインプラントが通常より困難になる場合があります。歯の本数が減ると、きちんと噛めないため、お食事をおいしいと感じにくくなり、栄養状態にも影響が出てしまいがちです。歯を失うことは、体の健康や生活の質に、大きな影響を与えるのです。

■歯周病と口臭

〇口臭を気にしている人は「およそ8割」

日本人は口臭がし易いといいます、老若男女のおよそ8割が口臭を気にしているとのことです。口臭は自分では気付きにくいため、余計に気になってしまうかもしれません。口臭は多かれ少なかれ誰にでもあるものです。

まわりの人が不快に感じるレベルになる前に口臭をケアしましょう。

・「口臭」の種類

発生原因はにおいのある食品を食べたことだと考えがちですが、食品以外にも様々な原因があります。

  • 生理的口臭
  • 起床直後や空腹時など、口の中の細菌が増殖して発生する口臭です。生理的口臭は健康な人でも発生する口臭で、歯磨きや食事をすることにより減少します。

  • 外因的口臭
  • ニンニク、ネギなどのニオイのある食品、お酒、タバコなどによる口臭で、多くは時間経過とともに弱まります。

  • 心因性口臭
  • 口臭検査でも口臭が認められず、本人だけが口臭があると思い込む口臭。自臭症とも言われます。

  • 病的口臭
  • 歯周病、進行したむし歯など、口の中の病気が原因で発生する口由来の口臭と、糖尿病や肝臓病など、体の病気が原因で発生する全身由来の口臭があります。

・歯周病によっても口臭が起こります。

むし歯や歯周病が原因で口臭を引き起こす場合があります。これを放置しておくと、むし歯・歯周病が悪化し、ひどくなると歯が欠けたり歯が抜ける原因となりますので注意が必要です。歯ぐきの状態をご自身でチェックして、歯ぐきが赤くなっている、腫れている、歯ブラシが痛かったり歯磨きのあとに出血がある場合は、歯科医院への受診をおすすめいたします。

日々の口臭ケアは、丁寧な歯磨きが重要です。硬い歯ブラシで力まかせに磨くのではなく、歯科衛生士のコーチングのもと正しい磨き方を身につけることが大切です。歯垢(プラーク)中の細菌や歯の表面・歯周ポケットの中の細菌の巣(バイオフィルム)は日々の歯ブラシではとれないので歯科医院で除去していきましょう。

〇知覚過敏の原因

歯周病などで歯ぐきが下がると、その分、歯の根元の部分(象牙質)が露出してしまいます。この部分は通常の歯と異なり、エナメル質という固い外周の歯に覆われていません、それどころか、表面には中の神経に通じる無数の穴がサンゴ礁のように空いています。ここに刺激が加わり知覚過敏を引き起こします。

・知覚過敏を放置すると・・・

知覚過敏はふだん痛みがでないため放置してしまいがちですが、歯磨きをすると痛みを感じるため、歯磨きがおろそかになってしまいます。その結果、たまった歯垢(プラーク)から出る毒素により歯周病がさらに進行したり、むし歯が進行しやすい環境にもなり、痛みはより強くなってしまうのです。

〇おとろえてきた歯ぐきとは

・歯ぐきが下がってきた、歯ぐきの色がくすんできた

若い頃にはなかった、歯ぐきの様々な変化。特に40代後半になると、半数以上もの人が歯ぐきの下がりや食事がつまったり、歯ぐきの色が気になるなど、歯ぐきのおとろえを感じています。

・歯ぐきが下がってきた、歯ぐきの色がくすんできた

まずは鏡を見て、今の歯ぐきの状態をチェックしてみましょう。

  • ハリが足りない
  • 健康な歯ぐきは引き締まっていて硬いです。ブヨブヨの感触は危険信号。

  • 色が気になる
  • 歯ぐきが「赤い」もしくは「どす黒い」色になっていたら要注意。

  • むずがゆい、出血する
  • ムズムズする、歯ブラシをしていてかゆい、出血するなどの症状は歯ぐきの炎症が原因かも・・・

一つでもあてはまる方は歯周病の可能性があります。ほかにも「歯ぐきがやせてきた」「歯と歯の間の歯肉が腫れっぽい、物が挟まる」なども危険なサインです。早めに歯科医院へ受診しましょう。

■歯周病の予防

〇歯科医院での歯科検診

さまざまな病気と同様に歯周病も早期に発見・治療することが大切です。毎日の歯ブラシに加えて、歯科医院で定期的な検診をおすすめします。歯科医の適切な指導のもと、歯科衛生士による口腔内の清掃とただしいセルフケアのコーチングを実践して歯周病の予防をしていきましょう。

・歯科医院での歯周病検診の流れ

歯科衛生士によるケア(プロフェッショナルケア)では毎日のセルフケアでは気づけない口腔内の隅々までチェックして、専門機器をつかった診察を行います。

主な流れ

  • お口の状態を確認
  • 歯の汚れや歯石の有無、むし歯の有無を確認します。歯ぐきの腫れや出血がないか、歯肉の炎症の原因になっている物(古い被せものや、歯並び)がないかをチェックしていきます。

  • 歯周病になっていないかチェック
  • 歯周病菌の出す毒素によって歯を支える骨(歯槽骨)がダメージを受けていないかレントゲンで確認します。

  • 歯周ポケットの深さを測る
  • 歯周ポケットの深さを測ることで、歯周病になっているのかその進行具合を調べます。健康な歯ぐきなら0~2㎜程度ですが、重度の歯周病になると、深さが6㎜以上になることもあります。

  • 歯垢(プラーク)や細菌の巣(バイオフィルム)などの磨き残しや歯ブラシ歯苦手なところをチェック
  • 細菌の巣(バイオフィルム)を染める専用の染色薬を使うことで、セルフケアで磨きにくいところを確認したり、汚れがたまりやすいところをチェックしていきます。

  • 歯垢(プラーク)や細菌の巣(バイオフィルム)を落とす
  • 歯周病の原因となる細菌の巣(バイオフィルム)をきれいに取り除きます。細菌は歯周ポケットの中に多く潜んでいるので、専門の機器を使って歯周ポケットの中もきれいに洗浄致します。

  • 一人一人に合った歯周病治療のご相談
  • 歯周病の進行具合や口腔内の環境により、口腔内の細菌の繁殖スピードが異なります。細菌の巣(バイオフィルム)が再び形成される前に定期的な検診をご提案します。また、ご自宅でのセルフケアのコーチングや歯ブラシなどの清掃器具のアドバイスをいたします。

  • 定期的に歯周病検診を受けましょう。